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東京高等裁判所 昭和44年(ネ)1280号 判決 1972年11月24日

控訴人

酒井泉

右訴訟代理人

木戸喜代一

被控訴人

山東忠義

渡辺民子

右両名訴訟代理人

秋根久太

主文

原判決を取り消す。

別紙物件目録記載の土地建物を競売に付し、その競売売得金中土地の分につき控訴人に三六分の二六、被控訴人両名に各三六分の五宛、建物の分につき控訴人に九分の七、被控訴人両名に各九分の一宛分配する。

訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人らの負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。更に控訴裁判所において共有物分割を求める。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出援用認否は、次に付加するほかは、原判決の事実欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

控訴代理人は、本件土地建物を競売しその売得金について分割を求めると述べ、証拠<略>

被控訴代理人は、右金銭分割に異議はないと述べ、証拠<略>。

理由

一、控訴人は本件土地建物につき被控訴人らとともに共有権を有しているので、これが分割を求めると主張するから先ず、控訴人および被控訴人らが本件土地建物に共有権を有するか、有するとすればその持分の割合はどれ程であるかにつき判断する。

この点に関する当裁判所の判断は、原判決の理由欄の二および三に記載のとおりであるから、これを引用する。そうすれば、控訴人は本件土地建物につき被控訴人らに対し共有物の分割を請求することができるものといわなければならず、そして、控訴人と被控訴人らとの間に分割の協議がととのわなかつたことは弁論の全趣旨に照らして明らかであるから、控訴人は右分割を裁判所に請求することができるものといわなければならない。

二、なお、被控訴人両名につき共通の訴訟代理人として秋根弁護士が本件訴訟に関与することは、被控訴人両名につき双方代理となるものであるが、被控訴人両名があらかじめ双方代理を承知でこれに同意しているものであることは、本件記録上明らかであり、このような場合には、対立当事者間で共通の代理人を選任し、この代理人が双方代理を行なうことも許容されるものというべきである。したがつて、秋根弁護士は被控訴人両名を代理して本件訴訟を有効に遂行することができる。

三、次に共有物分割請求について判断する。

本件において分割の目的とされている物件は本件土地建物であるが、当審における検証の結果、<証拠>によれば、本件土地上には別紙物件目録(二)の母家およびその附属建物である第一号ないし第四号の建物(本件建物)が母家と右第一号の附属建物には被控訴人両名が居住しているが、被控訴人両名は、本件建物については右母屋と第一号附属建物、本件土地については右建物等の敷地になつていない南西隅の4.5メートル道路に面した部分で一部前記附属建物第二号の劇場敷地になつている部分を取得したいと希望し、控訴人は本件土地は4.5メートル道路に面した表側とその反対側の裏側では利用価値が違うから、本件土地の別紙見取図の南北の線による縦割りを希望し、当審における鑑定人蔵元二治の鑑定の結果および検証の結果によれば、本件土地の地形・利用・南側と北側との価額差からみて、これが現物分割においては別紙見取図を南北の線による縦割りにする以外には方法はないものと考えられるところ、これによつては、本件建物を現物分割して右分割された土地の上に存続せしめることは困難である。そうすると、結局本件土地建物につき現物分割をすることは不能といわなければならない。従つて、本件土地建物を競売に付したうえ、その売得金を持分に応じて分配すべきである。これと異なる趣旨の原判決は取消しを免れない。

よつて、原判決の取消しを求める本件控訴は理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を適用し、主文のとおり判決する。

(位野木益雄 鰍沢健三 鈴木重信)

(物件目録省略)

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